若き日の憧れと、人生を変えた出会い

話は、私がまだ18歳の頃に遡ります。群馬の地で、建築板金職人としての道を歩み始めたばかりの若者だった私は、ある種の強烈な憧れを抱いていました。それは、藤田社長が手掛けられたフジマートやファミリーブックといった商業施設でした。ただの建物ではない、そこには人が集い、笑顔が生まれ、街の景色を創り出す圧倒的なエネルギーがありました。「いつか、あんな建物の仕事に携わってみたい」。そのスケールの大きさと、人々を惹きつける熱気に、私の心は強く揺さぶられたのです。

その想いが天に通じたのでしょうか。7年の歳月が流れた頃、先代の知人を通じて、思いがけない機会が訪れます。藤田社長が率いる一大事業の、屋根・板金工事を請け負うことになったのです。

ご縁は一度きりではありませんでした。和食レストラン「いっちょう」はもちろんのこと、スーパーマーケットの「フジマート」「アバンセ」「マルシェ」、レンタルの「ファミリーブック」や飲食店の「萬家」、さらには藤田社長個人のご自宅や別荘の改修に至るまで、事業の垣根を越えてお声がけいただきました。今振り返れば、新築や改築を含め、その数は優に200現場を超えています。雲の上の存在であった藤田社長との、運命的な出会いの瞬間でした。

「誰でもなれる」——その言葉に込められた真意

それから数年後、30代前半だった私は、幸運にも藤田社長とお食事をご一緒させていただく機会を得ました。緊張の中、私は勇気を振り絞って、長年心に秘めていた想いを口にしました。

「社長のようになりたいです」

私の真っ直ぐな言葉に、藤田社長は静かにこうおっしゃいました。

「誰でもなれる」

天にも昇る気持ちでした。しかし、その直後に続いた言葉が、私の心に深く、そして重く突き刺さったのです。

「でも、業態が違うからな」

一瞬、頭が真っ白になりました。これは突き放されたのか？ 違う業界だから無理だということなのか？

しかし、時を重ねるにつれて、この言葉の本当の意味を、私自身の頭で考えるようになりました。藤田社長は、年商600億円規模の巨大企業を一代で築き上げられた、時代の変化と顧客のニーズを鋭く見抜く卓越した才覚を持つ人物です。今もなお、コメダ珈琲3店舗や太田市に新規立ち上げされた飲食店の「たわらや」など、新たな事業でもその手腕を発揮されています。

一方で、私たちが営む建築板金は、請負が中心で、顧客は少なく、一件の単価が高い商売です。

私は、藤田社長の言葉の真意を、こう解釈しました。

「私の成功体験は、多くの顧客と日常的に接点を持つビジネスだからこそ成し遂げられたものだ。君のビジネスモデルでは、年商600億円という規模にはなり得ない。だから、私をそのまま真似しようとするな」

あの言葉は、単なる突き放しや慰めではなかった。それは、私のビジネスの「現実的な限界」を突きつけながらも、その限界の中で、私にしかできない道があることを示してくださった、最高の諭しだったのだと、今なら確信できます。

師の哲学を血肉に。挑戦こそが、永盛板金の「今」を創る

藤田社長は、「みんな行動ができない。一歩踏み出せる人は少ないが、その先へまた一歩と、またその先にまた一歩と踏み出せる人は、少なくなっていく」と、おっしゃっていました。

また、「行動すれば、良くも悪くも必ず結果が出る。その結果を見て、また考え、行動すればいい」とも、私に教えてくださいました。

この哲学こそが、その後の私の人生、そして経営者としての道のりを照らす、不動の羅針盤となりました。

この30年間、藤田社長から学んだ「商売の本質」は、永盛板金のあらゆる挑戦の源泉となっています。それは、単なるロマンではありません。藤田社長の背中で示された「顧客の本質的なニーズを見抜く力」と「時代の変化を先読みし、事業を大胆に変革する決断力」という、現実的な経営哲学もまた、私の血肉となっています。

伝統的な職人の技術と誇りを何よりも大切にしながら、時代の変化に合わせて進化を止めない。その哲学は、我が社の具体的なアクションにこそ表れています。

例えば、社員である永沼健太に、屋根材の遮熱効果を徹底的に自社で検証し、その結果をブログで発信するよう任せたこと。あるいは、まだ18歳だった私の息子に、外部に頼ることなく、独力でYahoo!ショッピングへの出店をゼロから立ち上げさせたこと。これらはすべて、藤田社長から教えていただいた「行動の哲学」の実践に他なりません。

単に作業として仕事を任せるのではありません。彼らの能力を心から信じ、自ら考え、悩み、そして行動する機会そのものを与えること。その試行錯誤の経験こそが、彼らを未来の永盛板金を担う真のリーダーへと成長させると、私は固く信じています。

言葉を超えた学び。成功者が見る「景色」の意味

つい先日のことです。藤田社長のご厚意で、マイバッハやアストンマーチンといった、世界最高峰の車に乗せていただく機会がありました。それは、単なる贅沢な体験ではありません。言葉だけでは決して伝わらない、成功者だけが見ることのできる「景色」を、その肌で、全身で感じさせてもらう、最高の学びの場でした。

なぜこの車がこれほどの価値を持つのか。どのような人々が、何を求めてこれを手にするのか。「本物」だけが持つ特別な価値と、それを顧客に提供するために必要な心構えとは何か。それは、建築板金という私の仕事においても、お客様に最高の価値を提供するための本質的な問いに、まっすぐに繋がっていました。

次世代へ繋ぐ「生きた証」

藤田社長からいただいた数々の言葉やお話は、私の胸に深く刻まれています。永盛板金のウェブサイトや私が綴るブログは、単なるマーケティングツールや情報発信の場ではありません。

それは、私が藤田社長から学んだ、「現実的なビジネス感覚」と「哲学を追求するロマン」という、二つの哲学のすべてを、次の世代を担う若者たちへ、そして未来の永盛板金自身へ残すための「生きた証」なのです。

これからも、師の教えをこの胸に深く刻み、現状に満足することなく、常に行動し続けます。そして、建築板金という業界の常識を塗り替え、お客様に真の価値を提供していくことを、ここに固くお約束します。

追伸

本記事を執筆するにあたり、私の人生の師である藤田勝好様には、お名前や数々のエピソードの掲載について、温かいご理解とご承諾をいただきました。この場をお借りし、心より御礼申し上げます。