【三代目の視座】群馬の家と雨漏り。地域を知る職人が、地域に合わせて納める理由
永盛 斉(Hitoshi Nagamori)
株式会社永盛板金 三代目代表
同じ図面で建てた家でも、群馬の風雨は「裏側」を狙ってくる
「図面通りにしっかり作ったはずなのに、なぜあんな所から雨が入るのか」── 雨漏りのご相談には、そんな声が少なくありません。施工そのものに手抜きがあるわけではない。それでも、雨漏りは現実に起きている。その原因の多くは、壁と屋根が取り合う、ほんのわずかな隙間にあります。
雨は、真上から降ってくるもの。多くの人はそう考えます。もちろんそれは間違いではありません。しかし、私がこの群馬の地で見てきた雨は、それほど素直ではありません。台風や春の嵐のように強い風を伴う雨は、真上からではなく、真横から、時には下から叩きつけてきます。さらに群馬には、冬に山から吹き下ろす乾いた強風「赤城おろし」があります。雨こそ伴いませんが、この乾いた風が長い年月をかけて建材を傷め、家に弱点を育てていくのです。
そうなると、雨漏りの侵入経路は、私たちが普段想定している「上」からではなくなります。屋根材や外壁材の「重ね」の部分。水が下へ流れるように設計された、その裏側。横殴りの雨が水を押し上げ、毛細管現象を誘い、建物の内側へと静かに浸透していくのです。空っ風が育てた弱点を、雨が突くのです。
同じ図面で、同じ材料で家を建てたとしても、建つ場所が違えば、家が耐えるべき自然の力は全く異なります。群馬の風は、家の正面からだけでなく、その「裏側」を執拗に狙ってくるのです。
水を下に流すだけでは足りない。風を「いなす」という発想
建築板金の基本的な役割は、屋根や外壁を覆い、雨水を適切に下に流して排水することです。いわば、家にとっての大きな傘のようなもの。しかし、群馬の気候を相手にする時、ただ傘を差すだけでは不十分だと私は考えています。
台風や春の嵐の横殴りの雨による吹き上げ。夏になれば、雹(ひょう)が屋根を叩くこともあります。自然の力は、常に私たちの想定を少しだけ超えてくる。だからこそ、私たちは水をただ下に流すだけでなく、横や下から吹き付ける風雨を巧みに「いなす」という発想で板金を納めなければなりません。
例えば、屋根の先端に取り付ける「唐草」という部材。ここに「水返し」という折り返しを作る。壁の端に取り付ける板金に「あざ折」という一手間を加える。水返しの寸法は、屋根の勾配や流れの長さを見て決めるもので、決して飾りの一折りではありません。それは、吹き込んできた雨水が、その勢いのまま内側へ進むのを物理的に止める、確かな堤防です。
板金の仕事は、水の通り道を作ること。そして、水が迷い込まないための「防波堤」を築くこと。
この小さな工夫の積み重ねが、設計図の線上には現れない、職人の手仕事の領域です。風の道を読み、水の流れを予測し、一枚の金属板を折って、曲げて、切って、この土地の気候に合わせた形を作り上げていく。それが私たちの仕事の本質です。
「すが漏れ」と「吹き込み」。あなたの家は、どちらに備えるべきか
「群馬は雪が多いから、『すが漏れ』が心配で…」というお話を聞くことがあります。「すが漏れ」とは、屋根に積もった雪が昼間の太陽で溶け、その水が夜の冷え込みで凍ることで軒先に氷のダムを作り、行き場を失った雪解け水が屋根材の隙間から逆流して雨漏りを起こす現象です。
これは、沼田市やみなかみ町といった、県の北部、いわゆる雪国の住宅にとっては非常に深刻な問題です。しかし、私たち永盛板金が主に仕事をさせていただいている太田市、桐生市、伊勢崎市、みどり市といった東毛地域では、そこまで多くの雪が積もることは稀です。
この地域で私たちがより警戒すべきは、雪による「すが漏れ」よりも、台風や強い風を伴う雨による「吹き込み」です。備えるべき相手が違うのです。業界の構造として、全国で通用する標準的な施工方法がマニュアル化され、それが品質の基準となる傾向があります。それは施工品質を安定させる上でとても大切なことです。しかし、その土地の気候風土という、マニュアルには書ききれない要素を無視してはならない、と私は強く感じています。
その土地で長く暮らす職人だからこそ、肌で知っている気候がある。
北部の家にはすが漏れ対策を厚く。南部の家には風対策を念入りに。群馬と一括りにせず、その土地ごとの気候の癖を見抜いて、適切な一手間を加える。それが、この土地で仕事を続ける私たちの責任だと考えています。
設計図の「線」の先に、職人の「納まり」がある
私たちは、家の形を決めることはできません。軒の出や屋根の勾配、使う材料や色を決めるのは、設計士さんであり、お施主様です。私たちはその領分を尊重し、与えられた設計の中で最高の仕事をするのが務めです。
設計図は、いわば家の骨格を示す「線」の集合体です。しかし、実際の建物は、その線と線が交わる部分、部材と部材が重なり合う部分、つまり「端部」の連続で成り立っています。この端部を、いかに美しく、そして機能的に「納める」か。そこに、建築板金職人の真価が問われます。
縦葺き屋根のハゼの高さや重ねの幅を、この地域の風量を考えて少しだけ変える。外壁の取り合い部分を、シーリング材に頼り切るのではなく、板金そのものの形状で水を切るように納める。一本の長い材料を使い、途中に継ぎ目を作らないようにする。これらはすべて、雨漏りのリスクを少しでも減らすために、父の代から、この土地で培ってきた知恵です。こうしたリフォームの事例や施工のコツも、別の記事でご紹介しています。
株式会社永盛板金は、1926年(大正15年)の創業です。この年月は、単なる数字ではありません。群馬の風雨と向き合い、失敗と改良を繰り返してきた知恵の蓄積の時間です。
私たちは気候を変えることはできない。できるのは、この土地の風雨を敬い、板金で受け流す納まりを実直に作ることだけです。
創業以来、この土地で板金を葺き続けて
地域に根ざす、とはどういうことか。それは、その土地の気候を知り、その土地の家に合わせた仕事をする、ということだと私は信じています。それは決して特別なことではなく、この土地で仕事をさせてもらっている職人としての、ごく当たり前の務めです。
父が、この群馬の風の中でハンマーを振るい、一枚の板金を叩いてきた。その音と技術を受け継ぎ、今の時代の材料と知識を掛け合わせて、次の世代に繋いでいく。それが三代目である私の役割です。
もし、ご自宅の屋根や壁のことで、何か気になることがあれば、いつでもお声がけください。職人として、正直にお話しできることだけを、誠心誠意お伝えします。
よくあるご質問
Q1. なぜ図面通りに施工しても雨漏りするのですか?
群馬特有の横殴りの雨や「赤城おろし」が、想定外の「裏側」から水の浸入経路を作るためです。設計だけでは対応しきれない、地域性に合わせた施工が重要になります。
Q2. 板金工事で雨漏りを防ぐ「一手間」とは何ですか?
水を下に流すだけでなく、風を「いなす」工夫です。例えば、部材に「水返し」や「あざ折」といった折り返しを作り、吹き込む雨水の勢いを止める物理的な防波堤を築きます。
Q3. 群馬県太田市周辺では「すが漏れ」と「吹き込み」、どちらを警戒すべきですか?
太田市、桐生市、伊勢崎市などの東毛地域では、積雪による「すが漏れ」より、台風や強風による雨水の「吹き込み」への対策がより重要です。地域ごとの気候の癖を見抜く必要があります。
Q4. 永盛板金の強みは何ですか?
1926年の創業以来、群馬の気候と向き合い続けてきた知見の蓄積です。設計図の先に、この土地に合わせた最適な「納まり」を考え、職人の手仕事で雨漏りリスクを減らします。
群馬の雨漏り対策、こちらもご覧ください
群馬の家と雨漏りについて、関連する記事をご紹介します。
まとめ:群馬の風雨を知り、家を守る「納まり」を
群馬の家を雨漏りから守るには、設計図通りに作るだけでは不十分です。横殴りの雨や「赤城おろし」といった特有の風雨は、家の「裏側」から静かに侵入します。私たち永盛板金は、1926年からこの土地で培った知見を活かし、水を下に流すだけでなく風を「いなす」一手間を大切にしています。この土地の気候を敬い、最適な「納まり」で、あなたの大切な住まいをお守りします。
株式会社 永盛板金
三代目代表 永盛 斉
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1926年から続く知見と、職人の手仕事で、お住まいをしっかりお守りします。
下記のLINEまたはお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

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