【三代目の視座】桐生市の外壁を守る一手間。継ぎ目と留め具に宿る板金職人の矜持
永盛 斉(Hitoshi Nagamori)
株式会社永盛板金 三代目代表
赤城おろしが、家の弱点を育てていく。
私は、桐生の冬、あの独特な風の音を聞くたびに、外壁のビス一本一本のことを考えます。赤城から吹き下ろす、乾いて冷たい、あの強い風。地元では「赤城おろし」と呼ばれ、冬の風物詩でもありますが、建築に携わる者にとっては、建物の耐久性を試す厳しい試練そのものです。
風が強い日、外壁は目に見えないほど微細に、しかし確実に揺さぶられています。特に、外壁材を躯体に固定している留め具の周辺や、パネルとパネルの間の継ぎ目(目地)には、繰り返し応力がかかります。それはまるで、針金を何度も同じ場所で折り曲げているようなもの。一度や二度では何も起きませんが、何年も、何十年もその力が加わり続けると、やがて金属疲労のように、建物の弱点となって現れてくるのです。
これは推測ではありません。物理的な現実です。そして、私たち板金職人の仕事は、この見えない力とどう向き合うか、という問いへの答えそのものだと、私は考えています。
シールに頼らない、という思想。
現代の外壁工事において、雨水の浸入を防ぐ最後の砦は、シーリング材(コーキング)であることが少なくありません。パネルの継ぎ目や窓まわりをゴム状の材料で埋め、水の通り道を塞ぐ。これは合理的で、広く採用されている工法です。他の工務店様や板金業者様も、それぞれの考えのもとで最善を尽くしておられます。
しかし、私はいつもこう自問します。果たして、消耗品に建物の防水生命線を委ねてしまっていいのだろうか、と。シーリング材は、紫外線や風雨にさらされることで、時間とともに硬化し、ひび割れ、やがてはその防水機能を失っていきます。桐生のように冬は乾燥した強風、夏は強い日差しと、時には雹(ひょう)まで降る環境では、その劣化が早まる可能性も否定できません。
シールは、いつか必ず劣化します。
だからこそ、永盛板金の仕事の根底には、「1次防水は板金そのもので止める」という思想があります。雨水が建物内部に到達する前に、まず金属の板そのものの形状と納め方で、水の流れを断ち切る。シーリング材は、あくまで万が一のための保険、2次防水という位置づけです。この考え方は、1926年(大正15年)の創業以来、先々代、先代と受け継がれてきた、私たちの仕事の根幹をなすものです。
ビスを隠し、端部を折る。当たり前が、当たり前でなくなった仕事。
では、具体的にどうやって「板金で水を止める」のか。それは、設計士の方が描かれた美しい意匠を現実に落とし込む、私たち職人の手仕事の中にあります。特別な魔法があるわけではありません。ただ、当たり前のことを、当たり前に、あるいはそれ以上に手間をかけて行うだけです。
例えば、留め具であるビス。私たちは、極力ビスが外壁の表面に現れない納まりを考えます。これは見た目の美しさ、すっきりとした意匠のためでもありますが、本質的な理由は防水にあります。ビスを打てば、そこには必ず穴が空く。その穴が、雨水の浸入口になる潜在的なリスクを孕んでいるからです。ビス頭を隠す納まりは、そのリスクを根本から絶つための、職人の知恵です。
また、金属板の端部の処理も同様です。板を切断したままの「切りっぱなし」にはしません。部材や目的に応じて、内側に折り返す「あざ折り」と呼ばれるような一手間を加えます。切り口は、金属が最も錆びやすい弱点です。そこを折り返して保護することで、錆の発生を抑制します。さらに、この折り返しは、毛細管現象によって水が壁の裏側へ吸い上げられるのを防ぐ「水返し」の役割も果たします。
建物の壁の長さは、当然一軒一軒異なります。既製品の長さでは足りず、どこかで継ぎ足さなければならないことも多い。しかし、その「継ぎ目」こそが、漏水最大の弱点です。だから私たちは、可能な限り工場で長く加工した「一本もの」の材料を使い、現場での継ぎ目を物理的に減らすことを目指します。これは、建物に合わせて板金をつくる、私たちの姿勢の表れでもあります。
私たちは、建物の寿命を左右するのは、こうした数ミリ単位の仕事だと信じています。
これらはすべて、設計士の方や施主様が決めた寸法や意匠の中で、私たち職人がどう解釈し、どう一手間を加えるか、という領域の話です。先代が口癖のように言っていた「見えなくなるところほど、丁寧にやれ」という言葉が、今も現場で響いています。
夏の雹。へこみと、その先の備え。
桐生の気候を語る上で、冬の赤城おろしと並んで無視できないのが、夏の雹です。特に近年、その規模が大きくなっているように感じます。金属製の外壁は、その素材の特性上、大きな雹が当たればへこみが生じることがあります。これは、残念ながら完全に防ぐことは難しい側面です。
ただ、知っておいていただきたいことがあります。こうした自然災害による損害は、条件にもよりますが、火災保険の補償対象となる場合があります。もちろん、私たちは保険の専門家ではありませんので、断定的なことは申し上げられません。詳しい条件については、ご加入の保険会社や、市が提供している助成金などの公式情報をご確認いただくのが最善です。私たちは、職人として、万が一の際に適切な手続きが進められるよう、施工の記録や仕様について正直にお伝えする責任があると考えています。
完璧な素材というものはありません。どんな素材にも長所と短所があります。大切なのは、その土地の気候と素材の特性を深く理解し、万が一の時の備えまで含めて、総合的に考えることではないでしょうか。
既製品では出せない「寸法」がある。
外壁の色やデザインを選ぶのは、家づくりにおける大きな楽しみの一つです。それは、そこに住まうご家族や、建物を設計された設計士の方の領域です。私たち板金職人の仕事は、その選ばれた美しい意匠を、桐生の厳しい風土から、できるだけ永く守るための「納まり」を考え、形にすることにあります。
一軒一軒、建物の形が違うように、風の当たり方や雨の流れも異なります。だから、私たちの仕事に固定の「標準仕様」はありません。その建物にとっての最適解を、現場で考え、手を動かし、納めていく。1926年(大正15年)の創業以来、その一日一日の積み重ねが、永盛板金の仕事なのだと思っています。
桐生の風土の中で家を守るということについて、もし気になることがあればいつでもお声がけください。職人として、知っていることを正直にお話しします。
よくあるご質問
Q1. 桐生市の「赤城おろし」は外壁にどんな影響を与えますか?
赤城おろしのような強風は、外壁に微細な振動を繰り返し与え、留め具周りや継ぎ目に負担をかけます。これが長年にわたると、建物の弱点となる可能性があります。私たちはこの見えない力を見据えて施工しています。
Q2. なぜシーリング材に頼りすぎないのですか?
シーリング材は紫外線や風雨で経年劣化し、防水機能を失う消耗品だからです。永盛板金では、まず金属の形状と納め方で雨水を止める「1次防水」を基本とし、シーリング材はあくまで2次的な保険と考えています。
Q3. 金属外壁のビス(留め具)を隠すのはなぜですか?
見た目の美しさもありますが、本質的な理由は防水です。ビスを打った穴は雨水の浸入口になる潜在的リスクがあります。ビスを隠す納まりは、そのリスクを根本から減らすための職人の知恵です。
Q4. 夏の雹で金属外壁がへこんだら、どうすればいいですか?
雹による被害は、ご加入の火災保険の補償対象となる場合があります。まずは保険会社にご確認ください。私たちはお客様が適切な手続きを進められるよう、施工記録などを正直にお伝えし、サポートいたします。
桐生市の外壁を守る、永盛板金の技術と思想
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まとめ:桐生の風土と向き合う、板金職人の一手間
一軒一軒、建物の形が違うように、風の当たり方や雨の流れも異なります。だから、私たちの仕事に固定の「標準仕様」はありません。その建物にとっての最適解を、現場で考え、手を動かし、納めていく。1926年(大正15年)の創業以来、その一日一日の積み重ねが、永盛板金の仕事なのだと思っています。桐生の風土の中で家を守ることについて、もし気になることがあればいつでもお声がけください。
株式会社 永盛板金
三代目代表 永盛 斉
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1926年から続く知見と、職人の手仕事で、お住まいをしっかりお守りします。
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