【三代目の確信】継がない、一本もの。雨漏りを防ぐ仕事は、弱点を作らない仕事です
永盛 斉(Hitoshi Nagamori)
株式会社永盛板金 三代目代表
屋根の谷は、雨水の交差点
屋根に降った雨は、水が高いところから低いところへ流れるという、ごく自然の摂理に従って軒先へと向かいます。その過程で、雨水が必ず集中する場所があります。それが屋根の「谷」です。二つの屋根面がぶつかり合う、文字通り谷間になっている部分。ここは、建物全体に降った雨の多くが集まり、川のように流れていく、言わば雨水の交差点です。
私がまだ若い頃、先代である父から口酸っぱく言われたことがあります。「谷に継ぎ目を作るな。あそこは一番水が通る場所だぞ」と。単純なことですが、これは板金仕事の真理です。水が集中する場所に、もし継ぎ目という切れ目があれば、それはそのまま雨漏りの原因となり得る弱点になり得ます。
どんなに丁寧に施工したとしても、材料と材料を繋ぎ合わせる「継ぎ目」は、一枚の板に比べて物理的な弱点となる可能性をゼロにはできません。だからこそ、私たちはその弱点を可能な限り作らないことを選びます。
雨漏りを防ぐ仕事は、弱点を作らない仕事でもあるのです。
弱点を作らない。それが私たちの仕事
株式会社永盛板金は、1926年(大正15年)の創業です。この長い時間の中で、私たちは太田市を中心に幾度となく雨漏りと対峙してきました。その経験から導き出された答えの一つが、「一本もの」で施工する、という考え方です。
特に雨水が集中する谷や、長さが必要な部材については、現場で加工し、継ぎ目のない一本の長い板金で納めることを基本としています。私たちの工場から現場へ運搬できる現実的な長さとして、最長で約6m。この長さまでなら、私たちは「一本もの」にこだわります。なぜなら、それが最もシンプルで、最も確実な防水の方法だと知っているからです。この考え方は、私たちの多くのリフォーム事例でも一貫しています。
これは単なる技術的な選択ではありません。雨漏りという未来のリスクを、施工の段階でいかに減らすことができるか。その一点を突き詰めた結果としての、私たちの思想です。継ぎ目を一つ減らせば、雨漏りの要因を一つ消すことができる。この考え方は、私が父から受け継いできた、永盛板金の仕事の根幹を成すものです。
父の背中と、二階の機械
私の父、先代の永盛は、決して口数の多い人ではありません。しかし、その仕事ぶりは、いつも雄弁でした。今、会社の工場の二階に、一台の小さな古い機械が静かに置かれています。それは、谷板金を成形するためのロールフォーミングの機械です。
私が18歳でこの仕事に入った時には、もうこの機械は工場にありました。きっと、ずっと以前に父が据えたものでしょう。父は、新しい道具や機械が好きな人です。若かった私は、その一台の本当の意味を、まだ分かっていませんでした。しかし今なら分かります。父は、谷を「一本もの」で納めるために、この機械を選んだのです。短い材料を継ぐのではなく、長い谷板金を継ぎ目なく成形する。それは、まさに「弱点を作らない」という思想を、具体的な道具によって実現しようとする試みでした。
父がどんな思いでこの機械を選び、購入したのか。その一台が、父の仕事に対する哲学を、今も静かに物語っています。工場の二階に残るその機械を見るたび、私は父の選択の確かさを思います。言葉ではなく、行動で示す職人の姿です。この機械は、私にとって単なる鉄の塊ではありません。父から私へと受け継がれた、仕事の魂そのものです。
それでも、継がなければならない時の作法
もちろん、建物の形状や規模によっては、どうしても6mを超える長さが必要になり、板金を継がなければならない場面も出てきます。理想は「一本もの」ですが、それが叶わない時にどうするか。そこにこそ、職人の真価が問われると私は考えています。
私たちが板金を継ぐ場合には、厳格な作法があります。まず、材料の「重ね」の寸法を十分に確保すること。先代は「屋根にかかわるところは、最低でも3寸(約90mm)は重ねろ」と常に言っていました。そして実際の重ね幅は、時と場合、そして屋根の勾配によって変えていきます。状況によっては150mm以上の重ね幅を取ることもあります。これは、一般的な寸法よりもかなり深いものです。
そして、その重ね部分にはシーリング材を3条、つまり両端と真ん中に打ち込みます。しかし、ここで最も重要なのは、私たちの思想です。私たちは、このシーリング材に100%依存することはしません。シーリング材は、経年で必ず劣化する消耗品です。私たちは、そのシーリングがいつか切れてしまうことを前提に屋根工事をしています。
シーリングが切れても、漏らさない。そのために、十分な重ね幅と、水の流れを考慮した端部の処理があるのです。シーリングはあくまで二次的な防水。万が一それが機能を失っても、板金そのものの構造、職人の手仕事による「重ね」という仕組みが、最後の砦として建物を守り続ける。これが群馬の屋根と雨樋を守る私たちの基本姿勢です。二次防水に多くを委ねるという考え方もある中で、私たちはあくまで板金そのものの構造、職人の手仕事による「重ね」で水の浸入を防ぐことを第一義としています。
技術は、物語となって受け継がれる
父が据えたあの機械は、今も工場の二階に残っています。それは、雨漏りのリスクを一つでも減らしたいという、父の静かな、しかし確固たる意志の表れです。その意志は、「一本もの」という考え方として私に受け継がれ、そして今、私たちの若い職人たちにも伝わっています。
なぜ継がないのか。なぜ深く重ねるのか。その一つひとつの手仕事の裏側には、理由があり、物語があります。技術とは、ただの作業手順ではありません。先人たちの知恵と経験、そして失敗から学んだ教訓が積み重なった、生きた物語なのだと私は思います。その物語を正しく理解し、次の世代へと繋いでいくこと。それこそが、三代目である私の最も大切な仕事なのかもしれません。
群馬県太田市の永盛板金として、屋根や外壁のことで、何か気になることがあればお声がけください。職人として、正直にお話しできることがあると思います。
よくあるご質問
Q1. なぜ屋根の「谷」は雨漏りしやすいのですか?
二つの屋根面がぶつかる谷は、雨水が集中して川のように流れる場所だからです。ここに材料の「継ぎ目」があると、物理的な弱点となり、雨漏りのリスクが高まります。
Q2. 「一本もの」での施工とは何ですか?
特に雨漏りのリスクが高い谷部分などを、継ぎ目のない一本の長い板金で納める施工方法です。永盛板金では運搬可能な最長約6mまで、この「一本もの」にこだわっています。
Q3. どうしても板金を継がなければならない場合はどうしますか?
建物の構造上6mを超える場合は、板金を継ぎます。その際は、屋根の勾配に応じて90mm〜150mm以上の十分な「重ね幅」を確保し、シーリングに頼りすぎない構造で防水します。
Q4. シーリングに100%依存しないとはどういう意味ですか?
シーリング材は経年で必ず劣化する消耗品です。私たちはシーリングが将来切れることを前提とし、板金自体の「重ね」や端の処理といった職人の手仕事で、長期的に建物を守ることを第一に考えています。
雨漏りを防ぐ職人の知恵
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まとめ:父の機械が教える「弱点を作らない」思想
父が据えたあの機械は、今も工場の二階に残っています。それは、雨漏りのリスクを一つでも減らしたいという、父の静かな、しかし確固たる意志の表れです。その意志は、「一本もの」という考え方として私に受け継がれ、そして今、私たちの若い職人たちにも伝わっています。技術とは、先人たちの知恵と経験が積み重なった、生きた物語なのです。
株式会社 永盛板金
三代目代表 永盛 斉
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