小さな板金屋が、Claudeをどう使っていくか

小さな板金屋が、Claudeをどう使っていくか

株式会社永盛板金 ロゴ

永盛 斉(Hitoshi Nagamori)

株式会社永盛板金 三代目代表

永盛板金の職人が住宅の軒先に金属部材を施工している現場

はじめに ― 派手な話は、ありません

「AIで業務を完全自動化」「AIで売上が何倍に」——そういう景気のいい話を期待されていたら、先にお詫びします。この記事に、そういう魔法は出てきません。

ここに書くのは、群馬の、太田にある、従業員のごく少ない板金屋が、地に足をつけて、Claude(AI)と、どう付き合っているか、という、ただの正直な記録です。代々続く、町場の建築板金屋です。大企業でも、IT企業でもありません。

きっかけは、たいそうな理由ではありませんでした。2025年の春、しばらく放っていた自社のサイトを、もう一度、一から作り直そう——そう思い立ったのが始まりです。最初に頼ったのは、Grokでした。夏からはGeminiを。そして2026年の春からは、ClaudeとClaude Codeを、仕事の中心に据えています。とはいえ、一つに絞ったわけではありません。いまも、Grok、Gemini、Perplexityと、何種類かのAIを併せて使い、ときに、それぞれの答えを、互いに突き合わせています。一つの道具に決めず、その時々で、いちばん手に合うものを選んできました。同じ2025年の夏ごろからは、息子の永盛 睦宜や、職人の永沼健太も、それぞれのブログを書くようになりました。

正直に言えば、最初は半信半疑でした。期待と、戸惑いと、両方がありました。寝るのも惜しんで没頭した時期もあれば、「これは使えない」と突き放した時期もありました。この一年あまり、行ったり来たりの、繰り返しです。そして、いまも、試行錯誤の真っ最中です。正直なところ、これで完成、という日は、来ないのだと思っています。

それでも——いや、だからこそ、書いておきたいと思いました。うちのような小さな会社が、AIと、どこまで、どう付き合えるのか。同じように悩んでいる、小さな会社の方の、何かの参考になればと思います。

1. まず、「できないこと」から話します

AIの話をするとき、たいてい、できることから語られます。でも、うちは逆から入ります。AIに、できないこと。ここを取り違えると、全部おかしくなるからです。

AIは、屋根の上の、夏の暑さを知りません。冬の現場の、指がかじかむ感覚も、知りません。雨仕舞いに向き合ってきた、職人の手の記憶も、持っていません。

たとえば、図面の上では、きれいに納まって見える役物が、実際の雨の流れを考えると、そこではない、ということがあります。水が、どこを伝って、どこで入るのか——それは、現場で、何度も濡れて、考えてきた人間にしか分かりません。こうした雨漏りの隠れた原因を特定する感覚は、AIにはないのです。AIは、そこを身体で知らないのです。

つまり、一次情報——実際に、その身で、経験したことだけが生む情報——は、人間にしか出せない。これは、AIがどれだけ賢くなっても、変わりません。AIは、経験をしないからです。

だから、うちでは、こう考えています。AIは「手」であって、「頭」ではない。何を語るべきか、何が本物か——そこを決めるのは、いつまでも、人間の仕事です。

2. では、何に使っているか

「頭」は人間、「手」がAI。そう割り切ると、使いどころが、はっきりします。

うちでは、たとえばこういうことに使っています。

  • 頭の中にある考えを、文章のたたき台にする
  • 調べ物を、早く整理する
  • ブログやお知らせの、下書きを作る
  • 同じ作業の繰り返しを、仕組みにして任せる

ただし、どれも、核になる中身——何を伝えたいか、現場で何を見てきたか——は、必ず人間が持ち込みます。AIが書いた、きれいなだけの文章は、すぐに分かります。中身が、空っぽだからです。逆に、職人の一次情報を、人間が持ち込めば、AIは、それを形にする、頼もしい手になります。

そして、ここが大事なところですが——AIは、ただの「手」では、終わりません。

知らないことを、教わることもあります。こちらの流儀を、根気よく教え込むこともあります。考えがまとまらないとき、話しかけているうちに、言葉になっていくこともあります。AIは、先生でもあり、生徒でもあり、道具でもあり、壁打ち相手でもある。ひとつの顔に、縛られません。

それは、人と人の付き合いと、同じです。相手が、師であり、客であり、ときに友でもある——そういう関係が、人間同士にもあるように、AIとも、何度も話し合いを重ねるうちに、だんだん、お互いが分かってくる。使い込むほど、こちらの考えを汲んでくれるようになる。その「話し合い」を、面倒がらないこと。これが、案外、いちばんのコツかもしれません。

3. それでも、決して「信じきらない」

ひとつ、大事なことがあります。AIは、自信たっぷりに、間違えます。

しかも、いかにも正しそうな顔で、間違える。実際、うちでも、サイトの訪問者数を、本当の数の、何十倍にも多く言ってきたことがありました。もっともらしい数字でしたが、事実とは、まるで違っていた。

だから、うちでは、AIの言うことを、そのまま鵜呑みにすることは、ありません。必ず、人間の目で、確かめます。事実かどうか。現場の感覚と、ずれていないか。まさに、正しい雨漏り診断で求められる姿勢と同じです。数字なら、元のデータに、必ず当たる。最後は、自分の目で、叩き割って判断する。

確かめるのは、事実だけでは、ありません。「これは、書いてもいいことなのか」——そこも、確かめます。AIのおかげで、たくさん書けるようになりました。でも、書けることと、出すことは、別です。書いたけれど、迷った末に、出さなかった記事も、あります。たくさん作れるようになったからこそ、何を出して、何を出さないか。その判断は、前より、ずっと、重くなりました。ここも、人間にしか、できないことです。

うちでは、一つのAIだけに頼らず、別のAIに、その答えをわざと批判させる、ということもしています。賛成と反対を、ぶつけ合わせて、その食い違いを、最後は人間が、判断する。一つの声を、信じきらないための、用心です。

道具として、とても優秀です。でも、優秀だからこそ、信じきると、危ない。包丁がよく切れるからといって、目をつぶって使う人はいません。それと同じです。

4. むしろ、小さな会社こそ、AIが効く

ここからが、小さな会社の方に、いちばん伝えたいところです。

大企業のような、人手も、予算も、専門の部署も、うちにはありません。本来なら、ホームページも、情報発信も、外の会社に、まとまったお金をかけて、頼むしかなかった。

ところが、AIという「手」を得たことで、その多くを、自分たちの手で、回せるようになりました。小さな会社のいちばんのハンデ——「人手と予算の無さ」を、AIが、かなりの部分、埋めてくれます。

それだけでは、ありません。たとえば、文章を書くのが苦手な職人でも、AIと、話すように、やり取りをすれば、自分の言葉で、ブログが書けるようになります。立派な文章を、一人でひねり出す必要は、ありません。現場で見てきたこと、伝えたいことさえあれば、形にするのは、AIが手伝ってくれます。

そして、もうひとつ。小さな会社は、小回りが効きます。思いついたら、すぐ試せる。大きな会社のように、稟議も、会議も、いりません。AIと相性がいいのは、実は、判断の速い、小さな会社の方です。

うちのような会社が、業界に先んじて、新しい道具を試せるのも、ここに理由があります。動きが軽い。決めるのが、速い。これは、規模の小ささが、そのまま強みに変わる、数少ない場面です。

5. 道具は、いずれ誰でも手に入る

正直に言います。AIは、これから、もっと賢く、もっと安く、もっと簡単になります。いずれ、誰でも、同じような道具を、手にする日が来ます。

そうなったとき、何で差がつくのか。

道具では、差がつきません。差がつくのは、その会社が、何を積んできたかです。

うちでいえば——1926年から、群馬で、板金一筋でやってきた歩み。一級建築板金技能士の手仕事。一枚一枚、寸法に合わせて曲げる、オーダーメイドの加工。逆Rの屋根のような、簡単には真似のできない技術。こうした群馬での雨樋修理のような地道な仕事の積み重ねです。

そして、先代から受け継いだ、一つの言葉があります。「水の気持ちになって、考えろ」。二代目の口伝です。水は、どんな小さな隙間も見つけて、入ってくる。だから、水になったつもりで、どこを通るかを考える。これは雨仕舞いの本質を、ひと言で突いた教えです。こういう、現場で汗をかいた人間にしか言えない言葉。現場で積み重ねた技。お客様と向き合ってきた姿勢。AIには、生み出せない、一次情報。これだけは、コピーできません。

だからこそ、私は、手の内を、全部、明かします。どのAIを、どう使い、どこで間違えたか。隠す意味が、ないからです。道具も、使い方も、いずれ真似されます。でも、真似できないのは、積んできた本物の方だけ。なら、出し惜しみせず、同じように悩む方に、お見せした方がいい。この記事も、その一つです。

だから、うちは、AIに振り回されないように、こう考えています。AIは、本物を「広く、早く、届ける」ための手段。本物そのものを、生み出すのは、これからも、人間の仕事。順番を、間違えない。これだけです。

おわりに

うちは、特別な会社ではありません。板金一筋でやってきた、群馬の、小さな会社です。

そんな会社でも、AIとは、こうやって、付き合えます。難しく考える必要は、ありません。できないことを、わきまえる。できることだけ、手伝ってもらう。決して、信じきらない。そして、本物は、自分たちで積み続ける。

加えて、もうひとつだけ。AIを、ただの道具と決めつけず、ときに教わり、ときに教え、ときに話し相手にする。一方的に使うのでも、使われるのでもなく、話し合いながら、お互いを、少しずつ理解していく。道具を使いこなすというより、付き合い方を、育てていく。そんな感覚です。

たったこれだけのことです。同じように、小さな会社で、AIに戸惑っている方の、肩の力が、少しでも抜けたら——この記事を書いた甲斐があります。焦らなくて、大丈夫です。一歩ずつ、AIと、話し合っていけば、いい。

二代目が、よく言っていました。「為せば成る、為さねば成らぬ、何事も」。人にできることは、たいてい、自分にもできる、と。新しい道具を前にして、身構える必要は、ありません。誰かにやれているなら、うちにも、あなたにも、きっと、できます。まずは、やってみる。話は、それからです。

私たちは、これからも、現場に立ち続けます。本物を、積み続けます。その上で、AIという新しい手と、じっくり、付き合っていきます。完成は、ないのだと思います。終わりのない付き合いだからこそ、面白い。そう思って、これからも、試行錯誤を、続けていきます。

よくあるご質問

Q1. 小さな会社がAIを導入するメリットは何ですか?

人手や予算の不足を補い、情報発信などを自社で回せるようになる点です。また、大企業と違って意思決定が速いため、新しい技術をすぐに試せる小回りの良さがAIと非常に相性が良いと私は考えています。

Q2. AIを使う上で最も注意すべきことは何ですか?

AIは自信たっぷりに間違えることがあるため、その情報を決して鵜呑みにしないことです。必ず人間の目で事実確認を行い、現場の感覚とずれていないか確かめる必要があります。AIはあくまで「手」であり、最終判断をする「頭」は人間です。

Q3. 永盛板金ではAIに何を書かせているのですか?

AIには文章のたたき台や下書き作成、調べ物の整理などを任せています。しかし、記事の核となる「一次情報」——現場での経験や職人としての知見——は必ず私たち人間が提供します。中身のない綺麗な文章ではなく、血の通った情報を届けるためです。

Q4. AIが進化しても、職人の仕事はなくなりませんか?

なくならないと私は確信しています。AIは屋根の上の暑さや冬の寒さを知りません。現場で培われた手の記憶や、水の流れを読む感覚は、経験した人間にしか生み出せないからです。道具が進化しても、それを使う人間の「本物」の価値は揺るぎません。

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三代目代表 永盛 斉

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公開日: 2026年06月02日 | https://www.nagaban.jp/

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