「段取り八分」をデジタルで極める。現場で迷わないための、独自の「逆工程」システム

【DXの原点】2009年当時に作成した1600㎡超の精密割付図。全ての板の長さをミリ単位で個別算出しています。
【DXの原点】2009年当時に作成した1600㎡超の精密割付図。全ての板の長さをミリ単位で個別算出しています。

「段取り八分」をCADで極める。BIMを先取した独自の逆工程システムとは

永盛 斉(Hitoshi Nagamori)

株式会社永盛板金 三代目代表

— 今でいうDXやBIMを15年以上前から。私たちの仕事の9割は、現場に行く前に終わっています —

私たち永盛板金の現場では、材料が足りなくなって慌てて電話をしたり、寸法が合わなくて現場で長時間悩んだりする光景はほとんどありません。

「板金屋さんの仕事って、現場で測って、その場で切って合わせるものじゃないの?」と思われるかもしれませんが、実は私たちの仕事の9割は、現場に行く前に終わっています。 だからこそ、現場では“迷わず・焦らず・美しく納めること”だけに集中できるのです。

今日は、私が25年ほど前から実践している、少し変わった仕事の進め方「逆工程」についてお話しします。

1. 先代の教え「段取り八分」を、CADで進化させる

職人の世界には「段取り八分(だんどりはちぶ)」という言葉があります。 「仕事の成果の8割は事前の準備で決まる」という意味で、私も先代から耳にタコができるほど言われて育ちました。

約25年前、私はこの教えをさらに突き詰めたいと考えました。 「パソコンの中で一度、完全に工事を終わらせてしまえばいいのではないか?」と考え、導入したのが「Jw_cad」です。 独学でCADを覚え、ネットで有志が公開してくれている「外部変形」を活用して、独自の「逆工程」システムを作り上げました。

2. 現場に行く前に、パソコンの中で「一回建てる」

通常の「現場で合わせながら加工する」順序とは真逆の工程を踏みます。

  • 図面・データとの連携:建設会社様から事前に図面やCADデータを取り寄せ、自社システムへ落とし込みます。
  • 完全なシミュレーション:そのデータに基づき、屋根の割り付けから雨樋の金具一つに至るまで、パソコンの中で組み立てます。
  • 1ミリ単位の計算:現場では「だいたい」で済ませがちな部分も、1ミリ単位まで計算して寸法を出します。

現場に行く時には、すでに「パソコンの中で一度、工事が完了している状態」なのです。

なぜここまで手間をかけるのか。それは私たちが「とてつもない心配性」だからかもしれません。 「材料が足りなくなったらお客様に迷惑がかかる」「納まりが悪かったら職人として恥ずかしい」。そんな不安を解消するために、徹底的なシミュレーションを行うようになりました。

性格上、1ミリのズレも気になってしまうため、デジタル上で計算し尽くさないと気が済まないのです。 その結果、現場での作業は「答え合わせ」に近くなります。迷いなく手を動かし、計算通りに美しく納める。これが永盛板金の「当たり前」です。

3. 2009年、群馬にとんでもない板金屋と言われた現場(DXの先駆け)

永盛板金 施工写真

永盛板金 施工写真

永盛板金 施工写真

永盛板金 施工写真

このシステムの精度を物語る、みどり市のHONDA販売店(約1600㎡)でのエピソードがあります。2009年頃、現在注目されているDX(デジタルトランスフォーメーション)やBIM(3次元設計管理)といった言葉が一般化するずっと前から、私たちはこの「デジタルによる完全制御」を実践していました。

▲ 2009年当時に作成した「逆工程」の記録。BIMの概念を先取りした超精密な割付図です

▶ A面〜D面の精密図面をPDFで確認する

※画像では読めない細かい寸法までPDFで拡大確認いただけます

屋根の水上が斜め、水下は階段状、右側ラインもわずかに斜めで、下地の梁まで斜めという極めて複雑な難現場でした。 この現場で、私は「2つの挑戦」をしました。

1. ハゼ折板500tpを「1枚ずつ違う長さ」で発注

私は、この複雑な形状に合わせて、ハゼ折板500tpを1枚1枚すべて異なる長さで発注しました。 メーカーの担当者からは「こんな板金屋、見たことがない。群馬にはとんでもない板金屋がいるね」と驚愕されたのを覚えています。

実際の施工では現場に成形機を持ち込み、CADで算出した長さに合わせて1枚ずつ成形。あらかじめ用意した「型」を当てて正確に斜めカットを施し、水上の立ち上げ加工まで地上で済ませてから1枚ずつクレーンで荷揚げしていきました。 また、斜めの梁に対するタイトフレームの配置もすべてCADで単品割り出しを行い、現場ではメジャーで数値を書き込むだけで済むようにしました。

2. 葺き始める前に「すべての役物」を揃える

永盛板金の必勝パターンは、「屋根を葺き始める前に、役物(雨押えなど)の加工をすべて終わらせておくこと」です。 事前のシミュレーションに基づき、あらかじめ自社のベンダーですべての役物加工を済ませてから現場に搬入しました。

結果、約1600㎡の巨大な屋根でしたが、屋根ふき自体はわずか1日で完了。その日のうちに役物の荷揚げまで終えていました。 この現場でも材料の追加発注は一度もありませんでした。この「一発納品」と「超効率化」の精度があるからこそ、無駄なコストを省き、質の高い施工をお客様に還元できるのです。

よくあるご質問

Q1. なぜそこまで細かくシミュレーションするのですか?

A. 「想定外」をなくし、最高品質で納めるためです。 事前に問題を潰しておくことで、現場では職人が「施工の品質」だけに集中できる環境を作っています。

Q2. 複雑な形の屋根でも対応できますか?

A. はい、それこそが私たちの得意分野です。 他社様が敬遠するような複雑な形状こそ、CADシミュレーションの力が発揮されます。「他で断られた」という案件も、ぜひ一度ご相談ください。

Q3. パソコンで計算すると、費用は安くなりますか?

A. 「無駄なコスト」を省き、その分を「品質」に充てています。 材料のロスや手戻りによる余計な人件費はいただきません。頂いた大切なお金は、すべて「家の寿命を延ばすための材料と技術」に使わせていただきます。

Q4. 「逆工程」システムは、どのような現場で特に役立ちますか?

A. 複雑な形状の屋根や、大規模な商業施設などで特に効果を発揮します。事前の精密なシミュレーションにより、難易度の高い現場でも高品質かつ効率的な施工を実現します。

まとめ:デジタルで計算し、アナログで仕上げる

この流儀は、現在4代目(息子)やスタッフ達、にも引き継がれています。 先代の「段取り八分」の魂を守りつつ、最新ツールで現代風にアップデートしていく。

「準備(デジタル)は緻密に、仕上げ(アナログ)は丁寧に。」

これからも「石橋を叩いて渡る」確実な施工で、皆様の大切な家を守り続けていきます。

「段取り八分の逆工程で、安心して任せられる屋根工事をしてほしい」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。

株式会社 永盛板金
三代目代表 永盛 斉

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