【三代目の視座】改修は最高の教材。他社の仕事から学ぶ職人の成長
永盛 斉(Hitoshi Nagamori)
株式会社永盛板金 三代目代表
「中身が見えるぞ」と父は言った
正直に告白すると、若い頃の私は、改修工事があまり好きではありませんでした。新築の現場は、何もない更地に一から屋根を葺き、壁を張っていく。まっさらなキャンバスに絵を描くような清々しさがあります。一方、改修工事は既存の建物が相手です。納まりは複雑で、予測できないことも多い。言ってしまえば、手間がかかるのです。
そんな私に、父である先代はよくこう言いました。「増築や改修はいやだろう? でもな、人がやった仕事の中身が見えるぞ」。その言葉の意味を、当時の私がどれだけ理解していたか。今となっては少し心もとないですが、父のその言葉だけは、ずっと私の心に残っていました。
株式会社永盛板金は、1926年(大正15年)の創業です。その長い歴史の中で、私たちは数えきれないほどの新築を手がけ、同時に、同じくらい多くの建物の改修や雨漏りの修理に携わってきました。そして今、三代目として会社を率いる私は、あの時の父の言葉の重みを、日々の現場で噛み締めています。
屋根をめくる。そこは、前の職人との静かな対話の場だ
新築工事が、設計図という未来予想図を形にしていく作業だとすれば、改修工事は、過去の職人さんの仕事という「歴史」を解き明かす作業です。特に雨漏りの修理などで既存の屋根や外壁をめくるとき、私たちは時を遡るような気持ちになります。
一枚、また一枚と古い板金を剥がしていく。するとその下から、何十年も前にこの場所で汗を流したであろう、見知らぬ職人さんの「手」が姿を現します。そこには、声なき物語が詰まっています。驚くほど丁寧な防水紙の処理、雨水の流れを読み切った水切りの納め方。思わず「うまいな」と唸ってしまうような仕事に出会うと、私たちは嬉しくなります。時代も会社も違う、顔も知らない先輩の仕事から、確かな技術と心意気を学ばせてもらうのです。
もちろん、その逆もあります。なぜ、ここで雨水が浸入してしまったのか。継ぎ目の処理、端部の納まり、あるいは壁との取り合い部分。経年劣化という避けられない要因もありますが、私たちの場合、めくってみて初めて本当の原因が見えてくることがほとんどです。
雨漏りの診断は、表面からだけでは決して完結しない。
しかし、私はこれを誰かの落ち度や失敗だと、そんな言葉で片付けたくはありません。むしろ、これは私たちにとって最高の「答え合わせ」の場なのです。この素材を、この勾配で、この納まりで施工すると、10年後、20年後、建物はこうなる。その現実を、目の前の「教材」が静かに教えてくれる。それは、時を超えた、前の職人さんとの静かな対話の時間です。
「面倒」が「学び」に変わる、父から受け継いだ視点
「人がやった仕事の中身が見えるぞ」。父の言葉は、単なる技術的な学びだけを指していたのではないと、今ならわかります。それは、仕事に対する「視点」そのものの承継でした。手間がかかる、面倒だ、と感じてしまう仕事を、どうすれば自分たちの成長の糧に変えられるか。その発想の転換です。
改修の現場では、他社様の優れた仕事に触れる機会が数多くあります。その一つひとつが、私たちの引き出しを増やしてくれる。ああ、こういうやり方があったのか、と。逆に、雨仕舞で負けてしまった箇所を見れば、自分の仕事を見直すきっかけになります。自分たちのやり方は本当に正しいのか? もっと良い方法はないのか? と自問自答する。この繰り返しが、職人を、そして会社を強くしていくのだと信じています。
他人の仕事は、最高の教材になる。
この視点を持つことで、どんな現場も「学びの場」に変わります。これは、教科書やマニュアルだけでは決して得られない、生きた知識です。父から私へ。永盛板金が世代を超えて技術だけでなく、職人としての姿勢を繋いでこられたのは、こうした現場での学びを大切にしてきたからかもしれません。そして今、私はこの視点を、うちの若い職人たちに伝えていく責任があると感じています。
私の仕事も、いつか誰かの教材になる
改修工事で過去の仕事から学ぶということは、裏を返せば、もう一つの大切な事実に気づかせてくれます。それは、今まさに私たちが手がけているこの仕事も、いつか未来の誰かの「教材」になる、ということです。
私たちが今日葺いているこの屋根も、数十年後には、誰かが改修のためにめくる日が来るでしょう。その時、私たちの仕事は、未来の職人さんの目にどう映るのか。彼らは、私たちの仕事を見て何を感じるだろうか。「ああ、丁寧な仕事がしてあるな」「なるほど、だからこの建物は長持ちしたのか」。そう思ってもらえるような仕事を、私たちは残さなければならない。
永盛板金の領分は、設計士さんが引いた一本の線を、いかにして雨から守り抜くかという、板金職人の手仕事(craft)にあります。軒先の唐草につける水返し、風に負けないための縦ハゼの締め方、一枚の板金を長く使って継ぎ目を減らす工夫。その一つひとつの手間に、私たちは未来へのメッセージを込めています。
私たちの仕事は、建物がそこにあり続ける限り、残り続ける。
その静かな責任と誇りを胸に、私たちは今日も現場に立ちます。他人の仕事から謙虚に学び、自分の仕事に静かに誇りを持つ。父が教えてくれた「中身を見る」という視点は、過去と未来を繋ぎ、私たちの仕事に深い意味を与えてくれるのです。
もし、ご自宅の屋根や外壁のことで、何か気になることがおありでしたら、どうぞご相談ください。職人として正直に、今わかることをすべてお話しさせていただきます。
よくあるご質問
Q1. なぜ改修工事が「最高の教材」なのですか?
他の職人さんが過去に行った仕事の「中身」を直接見ることができるからです。丁寧な仕事からは技術を学び、雨漏りの原因となった箇所からは、自分たちの仕事を見直すための貴重な教訓を得られます。
Q2. 改修工事で他社の仕事を見るメリットは何ですか?
自分たちにはない発想や納め方など、優れた技術に触れる機会になります。これが私たちの技術の引き出しを増やし、会社全体の成長に繋がります。教科書では学べない生きた知識の宝庫です。
Q3. 永盛板金が仕事で大切にしていることは何ですか?
自分たちの仕事が、数十年後に別の職人さんの「教材」になるという意識を持つことです。未来の職人さんに「丁寧な仕事だ」と思ってもらえるよう、見えない部分にも手間を惜しまず、責任と誇りを持って施工しています。
Q4. 雨漏りの原因は、外から見ただけでわかりますか?
表面的な診断だけでは本当の原因を特定するのは困難です。私たちは、既存の屋根や壁をめくり、内部の構造を確認することで初めて根本的な原因がわかると考えています。この「答え合わせ」が的確な修理に繋がります。
職人の成長と技術の承継に関する記事
改修工事から学ぶ職人の視点について、関連する記事をご紹介します。
まとめ:過去から学び、未来へ繋ぐ職人の視点
今回は、父の「人がやった仕事の中身が見えるぞ」という言葉をきっかけに、改修工事が私たち職人にとって「最高の教材」である理由をお話ししました。過去の職人の仕事と静かに対話し、良い点も課題もすべて自分たちの成長の糧とする。この謙虚な学びの姿勢こそが、1926年から続く永盛板金の技術と思想を支えています。そして、私たちの今日の仕事もまた、未来の誰かの教材になる。その静かな責任を胸に、私たちは日々の仕事に向き合っています。
株式会社 永盛板金
三代目代表 永盛 斉
— 屋根・外壁の改修、板金のご相談はこちら —
1926年から続く知見と、職人の手仕事で、お住まいをしっかりお守りします。
下記のLINEまたはお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

コメントをお書きください