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見えない価値をどう信じるか|板金屋の仕事と、ブランド化という挑戦

【四代目の視点】見えない価値をどう信じるか ── 板金屋の仕事と、ブランド化という挑戦

永盛板金 施工写真

永盛板金 施工写真

永盛 睦宜(Yoshiki Nagamori)

株式会社永盛板金 四代目候補 / Yahoo!ショッピング店「SHEET METAL NAGAMORI」担当

こんにちは。
株式会社永盛板金の四代目候補、永盛 睦宜です。
いつもは屋根材の比較や、屋根メンテナンスの話など、実用的な内容をお届けしていますが、今日は少し毛色の違う話をさせてください。四代目候補として日々この仕事と向き合う中で、ずっと考えていることがあります。それは、「板金屋の仕事の価値は、素人のお客様にはどうやっても見えない」という、この仕事の構造的な難しさについてです。
少し長い話になりますが、お付き合いいただければ幸いです。

飲食店なら、すぐに価値が分かる

話の導入として、飲食店の例を出させてください。
例えば、どこかのラーメン屋に入ったとします。スープを一口飲めば、美味しいかどうかは一瞬で分かります。店内の清潔さも、店員の接客も、席に座った瞬間から感じ取れます。味、雰囲気、サービス。これらはすべて、その場で、素人でも、判断できるのです。だから、良い店は評判になり、悪い店は淘汰されます。市場の仕組みが、比較的まともに機能しています。
料理人が手を抜いたかどうかは、食べれば分かります。仕込みに時間をかけたか、素材にこだわったか、はっきりとは分からなくても、何となくは伝わります。少なくとも「美味しい/美味しくない」というレベルでは、お客様が自分の感覚で判断できる。これは、飲食業という仕事が持っている、ある種の幸福な性質だと私は思います。

板金屋の仕事は、その場では何も分からない

では、板金屋の仕事はどうでしょうか。
お客様の屋根を葺き替えた、雨樋を交換した、雨押え板金を取り付けた。作業が終わった当日、お客様は屋根を見上げて「きれいになりましたね」とおっしゃるかもしれません。でも、その仕事が本当に良い仕事だったかどうかは、その場では誰にも分からないのです。
なぜなら、板金屋の仕事の本当の価値は、見えない場所にあるからです。下地処理が丁寧だったか、ルーフィング(防水シート)の重なり幅は適切だったか、雨押え板金の納まりは雨を正しく誘導できるように作られているか、釘ではなくビスを使ったか、ビスの長さは正しかったか。どれも、仕上がった後の屋根を地上から見上げても外からは分からないことばかりです。この「水を正しく流す設計」については、雨仕舞いとは何かで詳しく解説しています。
そして残酷なことに、手を抜いた仕事でも、丁寧な仕事でも、当日の見た目は同じです。どちらも「きれいな屋根」に見えます。
差が出るのは、5年後、10年後、20年後です。手を抜いた屋根は早く雨漏りします。下地処理が雑だった屋根は下地から腐ります。間違った納まりで施工された雨押えは、ある日突然雨を外壁内部に流し込み始めます。丁寧に仕事をした屋根は、30年経っても当たり前のように機能し続けます。けれどその頃には、施工した業者の名前すら、施主の記憶から消えていることが多いのです。

構造的な問題としての「見えなさ」

ここで強調しておきたいのは、これは業者の怠慢や説明不足の問題ではないということです。どれだけ丁寧に説明しても、施主の方がどれだけ熱心に勉強しても、板金屋の仕事の本当の品質は、完成した瞬間には判別できません。これは仕事の性質そのものから来る、構造的な問題です。
そして、この「見えない」という性質が、市場に一つの歪みを生んでいます。お客様は、目の前にある複数の業者のうち、どれが良い仕事をしてくれる業者なのかを、見た目で判断できません。見積書を見ても、専門的な項目が並んでいるだけで、それが適正かどうかは分からない。施工の様子を見ても、丁寧なのか手抜きなのか、素人には区別できない。
そうなると、お客様が唯一はっきりと比較できるのは「価格」だけになります。そして当然のように、一番安い業者が選ばれやすくなります。

「安さ」という判断基準が生む構造

これは業界の話なので、正直に書きます。価格だけが判断基準になる市場では、手を抜いた業者のほうが価格競争で勝ちやすくなるのです。
良心的な業者が、下地をしっかり処理し、正しい納まりで施工し、きちんとした材料を使えば、当然コストはかかります。一方で、下地処理を省略し、シーリングだけで隙間を塞ぎ、安い材料を使えば、コストは下がります。お客様にとって、その当日の見た目はどちらもほとんど変わりません。差が出るのは10年後、20年後です。
つまり、誠実に仕事をする業者ほど見積もりが高くなり、お客様に「高い」と言われて別の業者に流れる、という現象が起きます。これは、個々の業者の努力ではどうにもならない、市場の構造的な問題です。そして10年後、20年後に問題が起きた頃には、手を抜いた業者はもう別の名前で営業しているか、連絡が取れなくなっているか、あるいは「築20年だから仕方ないですよ」と言って済ませているかもしれません。
この現実を、私は四代目候補として、日々目の当たりにしています。先代や先々代の時代から付き合いのあるお客様のお家は、やはり30年、40年経っても大きな問題なく機能しています。一方で、「数年前に別の業者に頼んだ屋根なんですが、もう雨漏りしてるんです」という相談を受けて現場を見に行くと、下地処理が明らかに省略されていたり、納まりが雨仕舞いの基本を外していたりすることがあります。でもその業者を責めることはできません。当時のお客様は、見た目と価格で選ぶしかなかったのですから。
誤解のないようにお伝えしたいのは、「安い業者=手抜き」と単純化したいわけではない、ということです。安くて誠実な業者もいますし、高くても雑な業者もいます。ただ、価格しか比較の軸がない市場では、誠実な業者が経済的に不利になりやすい構造がある、ということをお伝えしたかったのです。この構造は、業者個人の努力だけでは解決できません。

じゃあ、どうすればいいのか

ここまでの話は、業界の構造的な問題についての、やや暗いお話でした。では、この問題に対して、私たち業者の側は何ができるのでしょうか。
答えは一つしかないと、私は思っています。「見えない価値を、少しでも見えるものに変えていく」こと。これしかありません。
すべてを見えるようにすることは不可能です。屋根の下地処理の丁寧さを、施主の方に全部見ていただくのは現実的に難しいですし、雨仕舞いの設計思想を隅々まで理解していただくのも無理があります。それでも、業者の側が努力すれば、今よりはずっと見える化できるはずなのです。
その具体的な手段が、情報発信であり、透明性の確保であり、ブランドを作っていくという地道な営みだと、私は考えています。

永盛板金がやっていることの、本当の理由

正直に打ち明けると、私が今こうしてブログを書いているのも、会社のYahoo!ショッピング店を立ち上げたのも、すべてはこの「見える化」の試みの一部です。
屋根材の比較記事を書いているのは、お客様に「どの業者を選ぶか」の前に「そもそも何を基準に選ぶべきか」の知識を持っていただきたいからです。カバー工法と葺き替えの違いを書いているのは、業者に勧められたまま判断するのではなく、ご自身で判断できるようになっていただきたいからです。梅雨前のセルフチェックの記事を書いたのは、お客様ご自身がお家の状態を把握する目を持っていただきたいからです。
これらの記事の本当の狙いは、単に「情報を提供すること」ではありません。お客様が「良い業者と悪い業者を見分ける目」を持てるようになること。それによって、誠実な仕事が正しく評価される市場に、少しでも近づけていくこと。これが、私が記事を書き続けている本当の理由です。

ブランドとは、見えない価値を信じてもらうための工夫

これらの試みを一言で言い表すなら、「ブランドを作ること」になります。
ブランドというと、華やかなロゴやかっこいい広告を思い浮かべる方が多いかもしれません。でも、私が考えるブランドとは、もっと本質的なものです。お客様が、その場では見えない価値を信じることができる、その根拠を業者の側が地道に積み上げていく営み。それが、私が目指しているブランドの姿です。
1926年から続く歴史も、ブランドを構成する要素の一つです。1926年から続いてきたということは、これまでの施工がそれなりに評価されてきた証でもあります。でも、歴史だけに甘えていては、新しいお客様には何も伝わりません。だから現代的な情報発信と組み合わせて、過去と現在、両方の角度から「見える化」を進めていく必要があるのです。
1926年から続く会社の四代目候補という立場は、守るべきものと変えるべきものの両方を背負う立場でもあります。現場の技術や、雨仕舞いという基本思想は、先代・先々代から受け継いだ変えてはいけないものです。一方で、情報発信の方法、お客様との繋がり方、価値の見せ方は、時代に合わせて変えていくべきものです。この両方を同時にやっていかないと、この仕事は次の世代に繋がらないと、私は思っています。

よくあるご質問

Q1. 良い業者を見分けるには、具体的に何を見ればいいですか?

確実な見分け方はありませんが、情報発信を積極的にしているか、施工事例を公開しているか、見積もりの内訳を丁寧に説明してくれるか、といった点は一つの目安になります。「見えない価値を見える化しようとしている」業者を探すことが、手がかりの一つだと思います。

Q2. 価格が安い業者は、選んではいけないということですか?

そういうわけではありません。安くて誠実な業者もいますし、高くても雑な業者もいます。お伝えしたいのは「安い業者=手抜き」ということではなく、価格しか比較の軸がない市場では、誠実な業者が経済的に不利になりやすい構造があるということです。だからこそ、価格以外の判断材料(情報発信・施工事例・見積もりの説明の丁寧さなど)も見ていただけると、選択の精度が上がります。

Q3. 永盛板金が情報発信に力を入れているのは、なぜですか?

板金屋の仕事の本当の価値は、完成した瞬間には見えないからです。屋根材の比較、カバー工法と葺き替えの違い、地上からのセルフチェック――こうした記事を書いているのは、お客様が「良い業者と悪い業者を見分ける目」を持てるようになることで、誠実な仕事が正しく評価される市場に少しでも近づけたいからです。「見えない価値を、少しでも見えるものに変えていく」という、地道な取り組みの一環です。

Q4. 永盛板金に屋根の相談をすることはできますか?

もちろんです。相談だけのご依頼も承っております。お電話・お問い合わせフォーム・LINEから、お気軽にご連絡ください。「他社で見積もりを取ったので意見が聞きたい」といったご相談も歓迎しております。

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まとめ:見えない価値を信じてくれるお客様のために

最後に、この記事を読んでくださっている方に、お伝えしたいことがあります。
業者選びに迷ったとき、一番安いところを選びたくなる気持ちは、よく分かります。大きな工事ほど、少しでも節約したいのが人情です。でも、本当に家を長く守ってくれる業者を選びたいなら、価格以外の判断材料を探してみてください。情報発信をしているか。施工事例を公開しているか。質問に丁寧に答えてくれるか。見積書の内訳を詳しく説明してくれるか。
これらは、誠実な業者が「見えない価値を見える化しようとしている」サインです。そうしたサインを発信している業者を選んでいただければ、少なくとも10年後、20年後に後悔する可能性は低くなるはずです。
そして私たち業者の側は、これからもその「見える化」の努力を続けていかなければならないと、改めて思っています。見えない仕事を誠実に続けることと、その誠実さを見えるように発信すること。この両方を諦めずに続けていくことが、1926年から続いてきた会社を、これからの世代に繋いでいくために、今、私がやるべきことだと信じています。
長い記事をお読みいただき、ありがとうございました。普段とは少し毛色の違う内容でしたが、これが、私が板金という仕事に向き合う中でずっと考えていることです。

株式会社 永盛板金
四代目候補 永盛 睦宜

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