雨樋の修理・交換 ―― 部分修理か、全交換か。板金屋の見極め|群馬・太田の永盛板金
永盛 斉(Hitoshi Nagamori)
株式会社永盛板金 三代目代表
桐生市 H様邸(直営工事・雨樋の架け替え=全交換)。軒樋=パナソニック アイアン「パラスケア U105」、色=しんちゃ。傷んだ雨樋を、屋根の面積と軒先の形に合わせて掛け替えた実例です。
雨樋(雨どい)の傷みは、放っておくと外壁・軒先・屋根の下地まで水が回り、傷みを広げます。ただ、傷んだからといって、いつも全部を替える必要はありません。直せるところは直し、替えるべきところは替える――その見極めが、修理・交換の肝心です。群馬・太田の永盛板金が、現場で見ている「部分修理か、全交換か」の分かれ目を、正直にお話しします。
よくある雨樋の傷み ―― 症状の見分け
雨樋の不調は、いくつかの決まった形で現れます。まずは、今どの状態かを一緒に見るところから始めます。
- 詰まり――落ち葉・土砂・鳥の巣などが溜まり、雨があふれる。多くは集水器(じょうご)や竪樋の入口で起きます。
- 継手(つぎて)の外れ・漏れ――樋と樋のつなぎ目がずれる、外れる、接着が切れて水が漏れる。
- 受け金具の外れ・緩み・サビ――樋を支える金具が外れ、樋が下がったり傾いたりする。
- 歪み・たわみ――強風や雪の重みで樋が波打つ、下がる。水が一箇所に溜まる。
- 割れ・穴――塩ビの樋が、雹(ひょう)や落雪、経年の脆化で割れる、穴が開く。
- 勾配(かたむき)の狂い――流れずに溜まる、逆に流れが速すぎて集水器で溢れる。
こうした不調を放置すると、あふれた水が破風(はふ)・鼻隠し・軒天を濡らし、木部が腐る二次被害につながります。ここまで進むと、雨樋だけでなく下地の補修も必要になります。だから、早めに見せていただくことが、いちばんの節約になります。
本当に詰まるのは「集水器(じょうご)」――ここが要
「雨樋が詰まった」というご相談の多くは、軒樋(横に流れる樋)そのものより、集水器(じょうご・落とし口)と、竪樋(縦のパイプ)の入口で起きています。軒樋の形が半丸でも角でも、最後にゴミが集まって水の出口をふさぐのは、この一点です。
竪樋の中は手が入りません。詰まれば針金などで掻き出すことになります。家庭用の高圧洗浄機は、雨樋を破損させたり、かえって詰まりを奥へ送り込む原因になるため、私たちはお勧めしません。だから修理では、まず集水器まわりの点検・清掃と、必要なら落ち葉よけの手当てから考えます。詰まりの理由や対策は「みどり市 雨といが詰まる理由(落ち葉・風・雹)」でも詳しくお話ししています。
部分修理か、全交換か ―― 分かれ目の見極め
傷んだ雨樋を、部分的に直すか、全部を掛け替えるか。私たちは、次の三つを見て判断します。
① 傷んでいる範囲と箇所の数
割れや外れが狭い範囲・少ない箇所にとどまるなら、その部分だけの修理・部分交換で足ります。金具の外れやズレだけなら、金具側の直しで済むこともあります。逆に、傷みが広範囲・多数に及ぶなら、部分的に継ぎ足すより、全体を掛け替えたほうが結果的に長持ちします。
② 雨樋そのものの寿命(経年)
塩ビの雨樋は、一般に15〜20年ほどが一つの目安と言われます(立地や日当たりで幅があります)。20年を超えて割れや脆(もろ)さが出ているものは、一箇所を直しても、隣がまた割れる。こうした場合は、全体の交換をご提案します。
③ 部材が今も手に入るか(廃番かどうか)
ここが、既製品を扱う板金屋ならではの見極めです。雨樋は、よほど特殊でない限り既製品(メーカーの規格品)を使います。ところが、古い雨樋は、同じ品番の部材がすでに生産終了(廃番)になっていることがあります。そうなると、割れた一本だけを同じもので替える、ということができません。集水器や継手・受け金具はメーカーごとに形が違い、他社の部材では合わないことも多い。「部分修理で済ませたいのに、部材がなくて全交換になる」――これは実際によく起こります。だから私たちは、修理のご相談でも、まず今付いている雨樋のメーカー・規格を確かめ、部材がまだ手に入るかを見てから、直せる範囲を根拠をもってお伝えします。
交換するなら ―― 素材と形の選び方
全交換や掛け替えになるなら、次の20〜30年をどう持たせるかを一緒に考えます。私たちは、金属(ガルバリウム鋼板)の半丸をおすすめしています。
塩ビより金属を勧める理由
塩ビ(塩化ビニル)の雨樋は手頃ですが、群馬では弱点が出やすい。紫外線で早いものは5年ほどから脆(もろ)くなり始めると、素材メーカー(積水化学)自身が指摘しています。夏冬の寒暖差で割れ、雹が当たれば割れて貫通し、寒い時期には中の水が凍って膨らみ割れることもある。一方、金属は雹や落雪でも、割れ・砕けにはなりにくく、凹み(へこみ)程度でとどまりやすい。しかも凹みは、板金屋の手で整えることができます。素材の寿命の目安も、塩ビが10〜20年ほどに対し、ガルバリウム鋼板やステンレスは20〜30年ほどと長い。更新の周期が延びるぶん、長い目で見た費用対効果につながります。
ただし、金属も万能ではありません。深いキズから錆びることがあり、とくにガルバリウムに、材質の違うステンレスの釘や金具を直接あてると「電食(でんしょく)」で錆が進む。だから金具の選び方・絶縁の取り方が、金属の雨樋では施工の要になります。ここは、素材の相性まで分かっている板金屋の仕事です。そして金属は、傷んで外したあとも溶かして資源に戻せる(リサイクルが効く)。長い目での処分のしやすさも、金属を勧める理由の一つです。
半丸と角、どちらを選ぶか
半丸(はんまる)は、丸い底に水が集まって流れる形で、勾配をつければ砂などの細かいゴミも水と一緒に流れやすい。角樋(かくどい)は、底が平らで幅が広いぶん、溜まった砂やゴミを道具で掻き出しやすく、掃除そのものはしやすい形です(近年は四隅を面取りした断面が主流で、角にゴミが残りにくい製品も一般的です)。屋根が大きく雨量を受ける建物や、金属外壁・モダンな意匠に合わせたいときは角樋が向きます。どちらが合うかは、屋根の面積・雨量・軒先の形・家の見た目から選び分けます。形と素材の詳しい選び方は「雨樋の種類(素材・形・寸法で選ぶ)」にまとめています。
「なぜその付け方か」――群馬の気候に合わせた設計根拠
同じ既製品の雨樋でも、どう付けるかで持ちがまるで変わります。ここが、既製品を並べるだけの工事との違いです。私たちは、群馬の気候に合わせて次のように納めます。
受け金具のピッチ(間隔)を、風と雪に合わせて詰める
雨樋を支える受け金具の間隔が広いと、冬の「赤城おろし」と呼ばれる継続的な強い北西風で樋が動き、大雪が降れば雪の重みで樋が下がって、外れや歪みの原因になります。受け金具のピッチは、一般に600〜900mmほどが目安ですが、積雪の多い地域では約455mm、豪雪地では約300mmまで詰めるとされます(出典により幅があります)。群馬は、2014年2月に前橋で観測史上最深の積雪を記録した土地です。平野でも雪の荷重を見込んで、この土地の風と雪に合わせてピッチを詰めます。屋根側の雪止めを併せて考えることもあります。
勾配は「緩すぎず、急すぎず」
軒樋の勾配は、10mでおおむね3〜5cm(概ね1/200〜1/330)が一つの目安とされます。緩すぎると土砂が滞留して詰まり、急すぎると集水器のところで水が溢れて逆流する。集水器の側をいちばん低い点にして、水糸で通りを見ながら金具の高さで勾配をつけます。勾配の狂いは、金具で付け直して整えます。
取付位置は「雪」と「ゲリラ豪雨」の両天秤で
雪の多い場所では、屋根から滑る雪に押されて樋が壊れないよう、取り付け位置を下げます。ただ下げすぎると、今度はゲリラ豪雨のとき、屋根を勢いよく流れ落ちる雨水が雨樋を飛び越えてしまう。だから位置は、雪に押されない高さと、豪雨の水を受けられる高さの、両方を天秤にかけて決めます。ここで効くのが、瓦か金属屋根かなど軒先の先端の形状――水がどこで切れて落ちるかで、受ける位置が変わるからです。
寸法は「屋根の面積」と「いまの雨量」で決める
同じ半丸でも、太さがいくつもあります。屋根の面積と雨量に合わない細い樋では、大雨のときに水があふれます。雨樋の排水は、その地域の設計降雨強度(1時間あたりの雨量の想定値)を基準に考えます。北関東(群馬)の目安はおおむね140mm/hとされ、昔の細い雨樋のままでは、いまのゲリラ豪雨で容量が足りないことがあります。だから交換のときは、屋根の面積と「いまの雨量」に合わせて、形・寸法・集水器や竪樋の数まで見て選び直します。「なんとなく標準」で付け替えるのではなく、その家の屋根に合う設計で納める。これが、100年続く板金屋の芯にあります。
台風・雪・雹の被害と、火災保険のこと
台風の強風、大雪、雹(ひょう)といった自然災害による雨樋の被害は、火災保険の対象になり得ます。一方で、年月による経年劣化は対象外です(日本損害保険協会も、経年劣化は対象外と明記しています)。ここを取り違えないことが大切です。
永盛板金では、被害が自然災害によるものだと分かる「調査報告書」を作成しています。具体的には、①自然災害が原因だと示す根拠、②複数の角度からの詳細な損傷写真、③技術的に妥当な復旧案――をまとめた報告書です。これを、お客様ご自身が保険会社へ申請する際の後押しとしてお渡しします。申請の代行は行いません(無資格者が報酬を得て申請手続きを代行することは、法律上の問題があるためです)。
なお、「保険で自己負担なく直せる」とうたい、着手金ゼロ・高い成功報酬を条件にする申請代行業者については、国民生活センターも注意を呼びかけています。まずは、ご契約先の保険会社・代理店へご相談ください。保険と調査報告書の考え方は「適正な保険審査を受けるために ―― プロが作成する『調査報告書』の重要性」に詳しくまとめています。
ご自身でできること・できないこと
集水器のゴミを取り除く、といった手の届く範囲の軽い応急手当は、ご自身でできる場合もあります。ただし、2階以上の高所は、法令上も足場が必要で、無理は禁物です。そして受け金具のピッチ・勾配・取り付け位置は、雪や風の荷重と軒先の形を見極めて決めるもので、ここを外した素人施工は、しばらくして同じ不調が再発しがちです。高いところと、付け方の設計が要るところは、私たち板金屋にお任せください。
直せるところは直し、替えるべきところは替える。費用は、傷みの範囲と足場の要否で大きく変わりますので、現地を見て根拠とともにお伝えします。まずは今の雨樋を見せてください。部分修理で足りるのか、全交換が要るのか。板金屋の目で、正直にご提案します。
よくあるご質問
Q. 雨樋は、部分修理と全交換のどちらになりますか?
A. 傷んでいる範囲と箇所の数、雨樋そのものの経年、そして同じ部材が今も手に入るか(廃番でないか)の三つで見極めます。狭い範囲・軽微な傷みは部分修理・部分交換で足ります。広範囲・多数の傷みや、20年を超えた脆化、部材が廃番で手に入らない場合は、全交換をご提案することが多くなります。最終的には現地を見て判断します。
Q. 雨樋が詰まりやすいのは、どこですか?
A. 軒樋そのものより、集水器(じょうご)と竪樋の入口です。軒樋の形が半丸でも角でも、最後にゴミが集まって水の出口をふさぐのはこの一点です。点検・清掃のしやすさと、落ち葉よけの手当てが要になります。
Q. 群馬では、塩ビと金属のどちらを勧めますか?
A. 金属(ガルバリウム鋼板)の半丸を勧めています。塩ビは紫外線で早いものは5年ほどから脆くなり始め、雹や凍結で割れやすいためです。金属は割れ・砕けになりにくく凹み程度でとどまり、その凹みは板金で整えられます。ただし、手頃さも弱点も正直にお伝えしたうえで、選ぶのはお客様です。
Q. 台風や雪、雹による雨樋の被害は、火災保険で直せますか?
A. 自然災害による被害で、経年劣化でなければ、火災保険の対象になり得ます。永盛板金は、被害が自然災害によるものだと分かる調査報告書(損傷写真・技術的な復旧案)を作成し、お客様ご自身の申請を後押しします。申請の代行は行いません。「自己負担なく直せる」とうたう業者にはご注意いただき、まずはご契約先の保険会社へご相談ください。
Q. 雨樋の修理を、自分でできますか?
A. 手の届く範囲で集水器のゴミを取り除くといった軽い応急手当は、ご自身でできる場合もあります。ただし2階以上の高所は法令上も足場が必要で危険です。受け金具のピッチ・勾配・取り付け位置は荷重と軒先の形の見極めが要り、ここを外すと同じ不調が再発しがちです。高所と、付け方の設計が要る部分はお任せください。
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